サラリーマン讃歌
俺は腕を頭の後ろで組んで、布団の上に仰向けに寝転がっていると、岡本から聞いた空見子の言葉を思い出していた。

「私の大好きな人です」

岡本にそう空見子は言ったのだ。

今でも俺の事を思ってくれている嬉しさはあったのだが、それならば何故会いに来てくれないのかという困惑にも似た苛立ちが俺を支配していた。

岡本もその時に会場へ来るように誘ってくれたらしいのだが、今日は急ぎの用事があるとの事で断られたようだった。

押しの強い岡本はそれでもめげずに、二日目の公演にも誘ったくれたらしい。




『じゃ、明日もやってるから明日はどうでっか?』

『明日は地元に戻らないといけないから……無理だと思います』

『地元って何処?』

『……遠くです。今日は実家に用事があって帰って来ただけだから』

『そおか。でも何時に帰るん?』

『明日の七時台の新幹線の予約とってます』

『そおか。しゃあないな』

『ごめんなさい』

『いやいや。直哉のファンの子やから、来てくれたらあいつも喜ぶ思てな。しつこく訊いてもうて、こっちもすまんかったな』

『……直哉に伝えておいて下さい。お芝居頑張って下さいって』

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