サラリーマン讃歌
第十四章
~公演二日目~
「任せとけ、直哉。俺が必ず連れてきてやるから。泥船に乗ったつもりで待っとけ」
高嶋はいつもの軽い調子でそう言うと、自分の胸をドンと叩いた。
「……頼む」
体力はほとんど残ってはいなかったが、仲間の励ましによって気力だけは充実していた俺は、万感の思いを込めて高嶋に言った。
「心配すんな。お前の想いは必ず届くよ」
俺の様子を見て、高嶋は真面目モードに切り換えると、真っ直ぐに俺の目を見据え、力強く言ってきた。
「そう信じてる」
「空見子ちゃんの為に、最前列のど真ん中の席空けとけよ」
俺の肩をポンと軽く叩くと、高嶋は楽屋の出口へと向かっていった。
結局昨日の夜は、明け方にウトウトした程度でほとんど眠る事が出来なかった。
今日の集合は昼からだったので、俺は朝の早くから昨日岡本が空見子に出会った場所へと向かった。
何の当てもなかったのだが、じっとはしていられなかったのだ。
午前中ひたすらその近辺を探し回ったのだが、広い繁華街の中を当てもなく彷徨っていただけなので、一人の人間を探し当てる事は不可能に近かった。