サラリーマン讃歌

~女々しい男~

社会人になってからよく思うのだが、時の流れを異常に早く感じる。

毎日同じ作業の繰り返しなので、時の移り変わりを感じ難いんだろう。

十代よりも二十代、二十代よりも三十代とある節目を越える毎により一層早さを増していく。

よく社会人になったら趣味を持てと云われるが、あれはごもっともである。

休日の日に何もせず、ただボーッとしていると仕事の為だけに生きているような気がする。

慌ただしかった四月も終わりに近付き、待ちに待ったGWがあと二日と迫った。連休があまりない、俺にとってはまさに黄金週間であった。

「桜井さんはどこか行く予定あるんですか?」

帰宅途中の電車内で久保が尋ねてくる。父親と二人で暮らしている久保の家は、俺が降りる駅の三駅向こうであった。

「いや、別にねえよ」

彼女がいない俺にとっては、予定など立てる必要もなく、いつも思いつきで行動していた。

「じゃ、俺ん家に来てくださいよ。いつも世話になってるんで、飯くらい作りますんで」

妙に律儀なところがある久保は、真面目な顔でそう誘ってきた。

「いや、悪いだろ、親父さんに」

連休中に息子の上司が家に来られては、気も休まらないだろう。

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