サラリーマン讃歌
第四章

~前妻~

GWの二日目である日曜日、朝から早速久保からの電話が入った。

「桜井さん今日は何か予定あります?」

「特にないよ」

「じゃ今日とかどうですか?」

その電話で約束を交わし、今日の夜の七時に家に行くことになった。

今日は妹さんが料理を作りにくる日らしく、それに併せて俺を呼んだらしい。

彼曰く、「男が作った料理よりは多少はマシでしょう」とのことだった。

久保のマシンガントークに因って、彼の家庭事情には結構詳しい。

なんでも九年程前に両親が離婚し、当時小六だった彼は父親に、小三だった妹さんは母親に引き取られたそうだ。

そんな男所帯である久保の家に、土日などの休日にたまに料理を作りにくるそうだ。

(家庭の手作り料理なんかを食べるのは何年振りだろう?)

ふと前妻である渚の事を思い出す。

渚が作る料理は好きだった。濃い味付けを好む俺の舌を非常に満足させた。ただ人一倍調理時間が長かったのは覚えている。

そんな渚とは、前の会社で知り合った。彼女は俺の二歳年上で、事務員ではあったが会社での先輩ということもあって、何かと世話を焼いてくれた。

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