サラリーマン讃歌
「んで、遊園地に行く前に、もう一人拾うから」
そう言って、もう一人の子、とやらの家の場所を久保に教えていた。次の家までは十分くらいらしい。
目的地に近づくにつれて、一般的な住宅よりもかなり大きめの家が目立ち始めた。此所は、この辺りでは有名な高級住宅街である。
梓は一軒の住宅の前で停まるように言うと、自分の携帯をいじりだした。多分、メールで到着を知らせているのだろう。
俺はその大きな家を呆然と眺めていた。
この高級住宅街の中でも一際大きい家は、外側の門扉から家までの距離が相当ある。
あまり趣味が良いとは思えないが、その門扉から家までに続く道に、ちょうど中央くらいに大理石の噴水まであった。
(何だよ、この家は?)
その嫌味なくらい大きな家を見渡していると、玄関の扉が開いた。
ドクン。
何故か、俺の心臓が高鳴った。
(……マジで)
空見子だった。まだハッキリとは見えないが、直感でそう感じとった俺は彼女を凝視していた。
その化け物でも見るかの様に目を見開いている俺を、梓はニヤニヤしながら見ていた。