サラリーマン讃歌
「なんか悪いね。付き合ってもらって」
「勘違いしないで。たまたま気分が悪くなっただけだから」
目を合わさず怒ったような表情で、たまたまの部分をやたらと強調して言う空見子が可愛かった。
「そっか」
今日、空見子に接していて思うのだが、意外と気が強い一面を持っていることを知った。
優しさを素直に見せなかったり、自分を強くみせようとしたり、案外無器用だとも知った。
一番意外だったのは、男馴れしていないように思えるところだ。このルックスであれば、男なんて腐るほど言い寄ってくるだろうに……
……沈黙が続いていた。
俺はその時間を楽しむように空見子のことを考えていたのだが、横では落ち着かないのか、空見子がソワソワとしている。
「あの……何て呼んだらいい?」
沈黙の息苦しさに負けたのか、それとも其れを訊きたくてソワソワしていたのか、それは定かではないが、空見子が突然尋ねてきた。
「何を?」
「おじさんのこと」
「何でもいいよ。おじさんでも、おじいさんでも」
そう言って俺が笑うと、空見子は困ったような顔をして俺の顔を見ている。
「じゃ、サクくんでいい?梓もそう呼んでるし」
「いいよ、何でも」