サラリーマン讃歌
会話している最中でも、表情が抜け落ちた様にボーっとする瞬間が今日も何度かあった。

声をかけると、直ぐに我に返るのだが、それは寂しさというよりは、もっと違う感情の様に思えるのだった。

《暗闇》

その感情に名前を与えるとすると、そんな言葉が合うような気がする。

人は誰しも心の中に闇を持って生きている。

闇とうまく共存するもの

闇を糧にして自分自身を成長させるもの

闇に冒され自分自身を見失ってしまうもの

闇に因って自らの命を絶つもの


様々あるのだろうが、現代社会に於いては当たり前のことだった。

それでも空見子には、あまりに似付かわしくない感情の様に思えた。

(気のせいかな……)

そう思い込みたい俺は、これ以上深く考えるのを止めた。

静かな部屋にいると、また余計な事を考えそうなので、俺は大きめのボリュームに合わせ、MDコンポの電源を入れた。

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