サラリーマン讃歌

「私、象って好きなの。あんな大きな体だけど、優しそうな目で子供を見守ってるじゃない」

そう言って象を見つめる空見子の目は何故か寂しそうだった。

この動物園は目玉になるような動物はいないのだが、それでも空見子は十分楽しんでいた。

トラ、ライオン、バッファローにペンギン。そしてラッコ。
その都度に、はしゃぐ空見子は子供のようだった。

普段はどちらかと云えば、大人びているので余計に今の空見子とのギャップを感じてしまう。

「ほんと好きなんだね」

「うん……好きだよ」

空見子と二人で園内をまわっていると、あっという間に閉園時間になってしまった。

「もうちょっと早く来れば良かったな」

「そうだね。でも楽しかったよ」

そう言うと、またあのとびっきりの笑顔を見せてくれた。

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