サラリーマン讃歌
丁度その時、店員が注文した料理を持ってきたので、会話が中断してしまった。

その後は、当たり障りのない会話に終始したので、先程の話に触れる事はなかった。




「今日は楽しかった。いろいろ奢ってもらっちゃったし。ありがとうございました」

食事を終えると既に七時半になっていた。日が落ちて、辺りは夜の景色へと移行していた。

「こっちこそ、ありがとね。無理矢理付き合ってもらって」

「無理矢理とかじゃないから。嫌だったら行かないし」

「そう言ってくれたら嬉しいよ。俺も楽しめたし」

別れ際になると、無償に寂しくなってきた。まだ空見子と居たかった。まだ空見子の空気を感じていたかった。

「もう暗いから送っていくよ」

「いいよ。ここからはバスだし、バス停からも家近いから」

「駄目。どんなにバス停から近くても、女の子を一人で帰す訳にはいかない」

「でも……」

嫌がっている様な感じではなく、申し訳なさそうな顔をしている。

「いいって。それが誘った俺の責任でもあるから」

「じゃ、お願いします」

もう暫く空見子と居ることが出来る幸せを感じながら、バス停へと向かった。

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