サラリーマン讃歌

~高嶋と云ふ男~


「お疲れっす!」

会社に戻ると、待ってましたと云わんばかりの勢いで同僚の高嶋が近付いてきた。なぜかニヤニヤしながら……

「今日風俗いかねえ?」

「いかねえ」

自分の椅子に腰掛けながら、高嶋を見ずに冷たく言い放つ。

「断わるの早っ!なんで?何か用事あるのか?」

「あんまり行きたくねえから」

俺の真横に突っ立っている高嶋には相変わらず視線を向けず、素っ気無く答える。

「じゃ、今日は行ける日だね」

「……人の話聞いてる?俺は行きたくねえの」

溜め息混じりに、漸く高嶋の方を見た。

「要は気持ちの問題だろ。何か用事がある訳でもねえみたいだし。あとは気合いでカバーしろ!!」

「なんで行きたくもねえのに、気合いを入れなきゃなんねえんだよ」

コイツはいつもこうだ。自分の欲望の赴くまま、他人の意思は関係なく自分の意見を押し付けてくる。そして相手が、うんと言うまで引き下がらない。

「よぉし。わかった。そこまで我儘を言うんなら……俺が奢ってやる!」

「ハッ?」

一人で納得した様にウンウンと頷きながら言う高嶋に、殊更大きな声を出して聞き返す。

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