サラリーマン讃歌
「一時期のヤル気は何処にいった?入社当時のお前はガムシャラに仕事をしてたぞ」
「…………」
「最近のお前を見てると全く覇気が感じられない」
「…………」
何も答えない俺に、田仲は嫌味っぽく大きく溜め息をついた。
「何かあったのか、最近?」
「特には何も」
「……俺が入社当時一番意識してたのは誰かわかるか?」
意図が掴めない質問をまた田仲がしてきた。
「……さあ。高嶋じゃないですか」
「いや。お前だ」
俺は少なからず驚いた。
わざわざそんな事を告げることにも、他人を意識していたということにも。
俺にそんな素振りは一切見せた事がないし、淡々と仕事をしている印象しかない。
その田仲が俺をライバル視していたなんて……
「なんで、俺なんですか?」
「お前が一番努力していたからだ」
思わず苦笑してしまった。
「単純な理由ですね」
確かに入社当時の俺はガムシャラに仕事をやっていた。
転職三度目という事もあってか、これで最後の会社にするつもりで、かなり気合いをいれて上を目指していたのも事実だ。
「理由は単純でも、それが一番難しいんだ」
「そんなもんですかね」