サラリーマン讃歌
「そうだ。高嶋みたいにセンスはあっても努力しない奴は駄目だ。いずれ腐ってくる」
「それは違いますね。センスがある奴には所詮勝てないですよ、努力しても」
嘗ての俺がそうであったように……
「それはお前が自分を過小評価しているからだ」
俺の心を見透かすように田仲は言う。
「お前が思っている以上にお前はセンスがある」
いつも俺をけなしている田仲の口からまさかこんな言葉が出てくるとは思わなかった。
「お前が弱いのは精神力だ。心が折れた時点で負けなんだよ。何事においてもな」
「……別に俺は誰とも勝負してませんから」
俺の負け惜しみのような言葉を聞くと、田仲は鼻を鳴らすと嘲笑うように口の端を吊り上げた。
「俺達は営業マンだ。営業マンである以上常に勝負なんだよ。自分自身とのな」
「…………」
「その勝負を放棄してる奴はウチの会社にはいらないだよ」
そう言い捨てると田仲は席を立ち、サッサと部屋を出ていった。
俺は悔しさと不甲斐なさで暫くその場で呆然としていた。
(何なんだよ、彼奴は……)
そう毒付く自分とは裏腹に、田仲の言葉が頭の中から離れる事はなかった。