サラリーマン讃歌
「俺が奢ってやろう。お前の精子にお金を出してあげよう」
「金の問題じゃなくて、気持ちの問題なんだよ!わかる?俺は拒絶してるの!」
「そうか、行ってくれるか!!流石は直哉だな。流石は俺の心の友!」
既に平然とそう宣う高嶋のペースに巻き込まれていた。
「ジャイアンか、お前は」
「じゃ、仕事が終わったら下で待ってるからな」
そう言いながらヒラヒラと手を振って、さっさと自分のデスクへと戻っていった。
(いっつも、あいつの思う壺なんだよなあ)
高嶋とはほぼ同期で、年齢も同い年ということもあってか、入社当初からよく連れだって会社帰りに遊びにいった。
ああいう性格には多少辟易もするが、基本的には嫌いではない。というか、妙に馬が合う俺の数少ない親友の一人だ。
彼のサバサバした性格は、あまり人の輪に溶けこもうとしない、というよりも、めんどくさい俺にとっては居心地が良かった。
他人に興味がないのか、あまりプライベートの事は聞いてもこないし、そんな素振りもみせない。
そのくせ、妙に勘だけはいい。俺がヘコんでいる時は何も言わず飲みに誘ってくる。といっても、俺はウーロン茶などをすすっているだけだが。