サラリーマン讃歌


「なんか買い物したいって言ってたよね?」

メールの中で空見子がそう言っていたのを思い出した俺は、焦った様に慌てて言った。

「うん。梓がもうすぐ誕生日なんだ。だから、そのプレゼントを買いたいの」

「じゃ、高嶋屋にでも行くか」

俺は未だに恥ずかしさで上気している顔の熱を感じながら歩き出した。

ここから電車で二十分ほどの所にある百貨店に、俺達は向かった。

女の買い物は異常に長いというイメージがあったが、空見子は一時間も係らずにプレゼントを選び終わっていた。

「買い物早いな」

「そうかな。いつもこんな感じだけど」

「空見子ちゃんって男らしいとこあるもんな」

「男らしいって……」

苦笑する空見子をフォローするように俺は言う。

「悪い意味じゃなくて、良い意味でだよ」

「そうなの?自分では解らないけど、男っぽいとか、サバサバしてるとかはよく言われるかな」

表面的には俺もそう思う。
ただ内面は非常に女の子らしい部分を持っていると思う。

外見的にもやや冷たい印象を受けてしまうが、いざ話してみると結構気さくだし、暖かい部分をたくさん持っている。

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