サラリーマン讃歌
俺に倣うように空見子も横に座る。

ベンチに腰掛けながら、そっと夜空を見上げると、満天の星達が精一杯の光を放っていた。

俺は上を向いたまま目を閉じ、そんな星々に願いを込める。

先程の表情が気にならないと言えば嘘になるが、今日告白すると決めてきた自分の決意を無駄にしたくなかった。

「俺は……」

俺は震える手をギュッと握り締めながら、彼女の目を見詰めた。

回りくどい言葉より、俺の素直な気持ちを空見子に伝えたかった。いや、聞いて欲しかった。

空見子も潤んだ瞳を俺に真っ直ぐに向けていた。








「俺は君が好きだ!」







その瞬間、俺を見詰め続けていた空見子の大きく見開かれた目から、大粒の涙が零れた。

それを境に、今まで堪えていたものが一気に決壊したかの様に、涙が止めどなく溢れてくる。

「……やっぱ俺じゃ駄目か」

俺はその涙を見て、力なくうなだれた。

「違う。そんな事ないよ……」

慌てて首を振りながら言う、空見子の声は掠れて聞き取りづらかった。

「私も……」

「私も?」

空見子の肯定的な言葉に、思わず顔を上げる。

「私じゃ駄目なの……」

空見子は涙を流しながら、俺の顔を凝視していた。

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