サラリーマン讃歌
「けど、仮病の可能性が高いよな」
「……なんで?」
「タイミング的に」
そう自信たっぷりに言う高嶋を、俺はキョトンとした顔でじっと見詰めた。
正直、高嶋がそう思う根拠が解らなかった。
「……理由はわからんけどな」
俺の表情を見て、高嶋は困った様な顔で付け足した。
「何て断られたんだ?」
ジョッキの中に残ったビールを一息に飲み干すと、高嶋は突然話題を変えてきた。
「え?ああ……『私みたいに汚れた子はサクくんにふさわしくない』って」
「汚れた子って?」
「……さあ」
高嶋は黙り込むと、何かを考える様に煙草をプカプカと吸い出した。
空見子のその言葉の意味を、俺もこの一週間ずっと考えていたが、思い当たる節が全くなかった。
少なくとも俺には、彼女が純粋すぎるほど純粋に見えていた。
多分、俺達が幾等考えたところで結論はでないのだろう。
「……人には言えないような秘密があるんだろうな」
「……そうだな」
其れが何なのかを俺は知りたかった……