サラリーマン讃歌

~家庭の事情~

その日の夜、俺は熟睡した。

彼女への想いを振っ切った訳ではなく、このままの気持ちで終わりにはしたくなかった。

俺は昼頃起きると、早速久保に電話をした。

「どうしたんすか?」

突然の俺の電話に、久保は明らかに驚いていた。

「今日は何か予定あるのか?」

「特にはないですけど……梓とは会いますけどね」

「そっか。じゃ、ちょっと俺に付き合ってくれないか?」

「え?別にいいですけど……ど、どうしたんすか?」

今週の死んだ様な俺の様子と、今の俺の様子に明らかに戸惑っているようだ。

「梓ちゃんに訊きたいことがあるんだよ」

「……わかりました。もうすぐ家出るんで、迎えに行きます」

何か思い当たる節があるのか、久保は急に納得した。

「そこまではいいよ。場所言ってくれれば、其所までいくよ」

「いいっすよ。どうせ車なんで」

「そうか。じゃ、悪いけど頼むわ」

電話を切ると直ぐに用意をし始めた。




「で、私に何の用?」

会うなり梓が素っ気なく問掛けてくる。

「空見子ちゃんの事だよ」

「まあ、そうでしょうね」

そう言っている梓の顔は、明らかに怒っている。

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