サラリーマン讃歌
「私よりサクくんの方がよく知ってると思うんだけど」
「……なんで?」
「いくら電話してもクミちゃん出ないもん」
かなり棘のある言い方をしてくる梓に、俺は戸惑いを隠せなかった。
「一体何をしたの?」
「ふぇ?」
何故、俺が責められているのか全く解らない。
「この間の土曜日、クミちゃんと遊びにいったんでしょ?」
「ああ」
「それからだよ、クミちゃんがおかしくなったの」
梓の怒った様な視線を避けるように俯く。
「そうみたいだな」
「そうみたいって……何、他人事の様に言ってんのよ!」
俺に掴みかからんばかりの勢いで、梓が怒鳴った。
「この間の土曜日、俺、クミちゃんにフラれたんだ」
「ふぇ?」
鳩が豆鉄砲をくらった様な顔で梓が俺を見てくる。
「どう言うことよ?」
「だから、フラれたの、俺が」
「なんでサクくんがクミちゃんにフラれて、クミちゃんがおかしくなるのよ?」
「俺が訊きたいよ」
俺は苦笑するしかなかった。
「うーん……どう言うことなの……タッちゃん?」
「俺が解るわけないだろ」
突然話を振られた久保が、困惑気味に答える。