サラリーマン讃歌


「でもなんで振ったんだろ?私にはクミちゃんがサクくんの事気に入ってるように見えたんだけど……」

一番近くにいる梓がそう言ってくれるのは嬉しいが現に俺は空見子に振られた。

「……でも一回気になる事言ってたなぁ」

「何?」

「『私にはサクくんはもったいない』って」

「この間も言われた」

「そっか……」

俺と同じ事を言っていたとなると、梓も俺が知りたい事は知らないのだろう。

「……クミちゃんって家族とうまくいってたの?」

「え?なんで?」

「クミちゃんって家族の話をあまりしたがらなかったから……」

「それと振られた事と何か関係あるの?」

「ん?……なんとなく」

「う~ん……私もあまり知らないんだけど両親とは仲はそんなに良くないと思うよ」

「なんで?」

「ほら、あそこの家って超お金持ちじゃない。だから小さい頃から両親が忙しくてあんまり可愛がってもらった事がないみたいなの」

確かに金持ちなのはあの家を見れば解る。

「だから結構寂しい思いをしてたみたい」

「そうなんだ……」

今の時代、有りがちと云えば有りがちなのかもしれないが、小さい頃からだとすればその影響は大きい。

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