サラリーマン讃歌
人格を形成する上で一番大事な時期に、親の愛情を受けていないとなると、其れだけで人の一生が大きく変わってくる。

まだ子供を育てた事がない俺だが、そんな話はよく聞く話だ。

空見子がたまに見せたあの寂しそうな顔も、それが影響していたのかもしれない。

「詳しい話は、私にもあまりしてくれなかったけどね」

と、少し寂しそうに梓が笑う。

「……誰にでも知られたくない部分ってあるよな」

呟く様に俺が言った。

「……そうですね」

久保が感慨深げに言うと、シンミリした空気がこの場に流れた。

「今からクミちゃん家に行こうと思ってたから、様子見てくるよ」

その空気を嫌うように、梓が殊更明るく言った。

「悪かったな、二人の時間邪魔して」

「ホントだよ」
「全然いいですよ」

二人同時に全く正反対の言葉を吐いた、この仲の良いカップルに俺は少しだけ嫉妬した。

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