サラリーマン讃歌
だが既にフラれている俺にどんな良くない話があるんだろう?

ひとつ考えられるとすれば、空見子の秘密の事なのだろうが……

俺は不安な想いを抱えながらも、身支度を整えると待ち合わせ場所へと向かった。




「あ、こっちだよ、サクくん」

待ち合わせ場所である喫茶店に着くと、梓が先に着いていたらしく、奥の席から手招きしてきた。

「んで、どんな話なの?」

電話の後ずっと悶々としていた俺は、席に座るなり前置きなしで単刀直入に話をきりだす。

「うっ……うんとね……」

いつもはストレートに発言する梓が言い淀んでいる。

そんな梓の様子を見ていると、更に不安が募ってくる。

「あのね……昨日クミちゃんにやっと会えたんだ」

「……うん」

「でね……色々話したんだけど……サクくん、まだクミちゃんの事諦めてないんだよね?」

「……そうだな」

しどろもどろになりながら、言葉を選ぶ様に話す梓の顔を、不安そうに眺めながら答える。

「……クミちゃんは諦めた方がいいよ」

「はっ?なんで?」

「……たぶん見込みがないと思うから……」

梓が何故落ち込んでいる俺に、追い討ちをかけるような事を直接言いにきたのか理解出来なかった。

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