サラリーマン讃歌
「ハッキリ言ったの、空見子ちゃんが?」
自分の苛立つ気持ちを押さえ切れず、かなり不機嫌な声音になっていた。
「え?……うん……そうだよ……だから諦めた方がいいよ」
「そうか。んで、わざわざ今日は俺に止めを刺すために来てくれたんだ?」
振った理由を聞いた上での忠告なのだろうが、今の俺にそれを受け止めるだけの心の余裕はなかった。
「そんなつもりは……」
いつもと違う俺の様子に気圧されたかの様に、梓の声が小さくなっていく。
それきり二人とも会話の糸口が見付からず、しばらくの間、重い重い沈黙が漂った。
梓は拳を握り締め、何かに耐える様に体を強張らせ俯いている。
俺はいつもなら梓や空見子の前では吸わない煙草を、プカプカと絶え間なく吸っていた。
梓は一切悪くないと解ってはいても、自分自身の感情をコントロールしようとすればするほど、苛立ちが募ってきた。
「……ごめんね」
梓が唐突に口を開いた。
重い沈黙に耐えかねたのか、あるいは俺の心情を慮ってか、何故か梓は謝まってきた。
「……会わせなければ良かったね、二人を」