サラリーマン讃歌
いつも勝気な梓の声が震えていた。

「私のちょっとした気持ちから……サクくんとクミちゃんの驚く顔が見たいって……」

苦しそうに吐き出す言葉は、掠れて聞こえにくかった。

「私の悪戯心が……二人とも傷付けちゃったんだね……」

相変わらず顔を深く俯けていたので梓の表情は見えなかったが、微かに肩が揺れていた。

「本当に……本当に……ごめんなさい」

そんな俺達の心情を思いやっての梓の言葉も、今の俺の心には届かなかった。

「なんで……なんで……あの子に会わせたんだよ?」

言い掛かりもいいところだったが、やり場の無い気持ちを梓にぶつけてしまっていた。

「……ちょっとした悪戯心だったんだよな?……三十のおっさんの心を痛ぶって楽しむつもりだったんだろ、最初から?」

「そんなことない!クミちゃんはサクくんのことが気になってたみたいだったし……ほんとにそう思っ…」

「でも事実フラれただろ!!」

梓が言い終わる前に、言葉を被せるように喚いた。

端から見ればただの八つ当たりに過ぎないことはよく解ってはいたが、感情を抑えることが出来なかった。

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