サラリーマン讃歌
第九章

~ヒカリ~

とても仕事が出来る精神状態ではなかったが、一週間をなんとか乗り切った。

精神的なダメージが癒えない中の仕事は、いつもの倍以上に疲れた。

それでもこれ以上高嶋などには心配をかけたくなかったので、平静を装った。

だが仕事に集中しようと思えば思うほど、空回りして平凡なミスが多々あった。

こんな疲れる一週間を乗り切った週末は、大抵家に引き籠もって休みを過ごすのだが、今は独りになるのが嫌だった。

休みの初日である土曜日、俺は意味もなく家を出た。

普段は人込みを避ける傾向がある俺だったが、今日は逆にそういう場所へと向かった。

繁華街につくとアテもなくふらふらと彷徨った。今日の俺は人込みが何故か心地良かった。

おそらく大勢に紛れてしまえば、自分という個人がそれに同化して、消えてしまう様な錯覚に陥るからだろう。

正直消えてしまいたかった。

社会人としても悩んでいた俺にとっては、この失恋はかなりのダメージだった。

何もかもが見えなくなっていた。

昼頃からこの街を徘徊していたが、夕暮れ時になってもなお夢遊病者のようにただ歩き続けた。

この時間帯になってくると、ストリートライブをする若者達がチラホラと増えてくる。

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