サラリーマン讃歌
(なんて単純な子だ。ってかちょっと天然)
心の中で俺は苦笑していた。
「なんか昔演劇やってたんだって……あれ?そういえば、名前何て言うんですか?」
「え?桜井だけど……」
「桜井さん、昔演劇やってたんだって」
「さっき聞いたよ」
素っ気なく背の高い女が答える。
「さっきは名前を言わずに言ったから、恭子ちゃん、分からないんじゃないかと思って」
「そんな馬鹿じゃないです」
また素っ気なく恭子が言う。
「そんな言い方ないでしょ。私が親切心で言ってあげたのに」
「はい、はい」
ブーブー怒っている亜理砂をよそに、恭子が俺に尋ねてくる。
「芝居、辞められたんですか?」
「ああ。仕事と両立するのが難しかった」
「もうやらないんですか、芝居?」
「……どうなんだろ?自分でもよくわからないな……でも、今日久しぶりに芝居見て、君達が羨ましかったな」
「羨ましい?」
小首を傾げながら恭子が尋ねてきた。
「そう。羨ましかった」
「何でですか?」