サラリーマン讃歌
「何でだろう?……そうだなあ……うまく言えないけど、肯えて言うなら、楽しそうだった……からかな」
自分の子供じみた答えに、思わず自分で苦笑してしまった。
しかし、俺の言葉を聞くと、恭子は笑わずに何か考える素振りをしていた。
「どうしたの、恭子ちゃん?」
何も言わない恭子に亜理砂が声をかける。
「それだったら、うちの劇団に入りません?」
暫く物思いに耽っていた恭子が、唐突に口を開いた。
「え?」
「え?」
俺と亜理砂が同時に驚きの声をあげた。
「うちの劇団全員で十一人なんですけど、そのうち男って三人しかいないんですよ。男手が増えると何かと助かるんですけど」
俺のポカンとした表情に動じるでもなく、淡々と恭子が続ける。
「実はちょうど男の団員募集しようっていう話があったところなんです」
「そういえばそんな話してたよね、この間」
「私達の芝居も気に入ってくれたみたいだし、どうですか?」
二人の視線が返事を待つように俺を見ていた。
「なんで俺なの?」
「うーん……なんとなくです。フィーリングってやつかな」
「フィーリングねえ……」
「あとは何よりもお芝居が好きそうだからかな」