サラリーマン讃歌
そう言うと恭子は満面の笑顔を見せてきた。亜理砂も嬉しそうにニコニコしながら俺を見ていた。

「そんなに簡単に入れるの?働いてるから、そんなに助けられないと思うけど」

「みんなそうですよ。みんな働きながらやってる」

「そうなんだ」

「私もOLやってますよ。って言っても、小さい会社の事務ですけど」

恥ずかしそうに恭子は笑った。俺はこの二人と知り合って間もなかったが、二人の人柄に好感が持てた。

「そっか。わかった。入団させて」

「嘘!本当にいいんですか?」

「うん。お願いします」

俺は二人に向かって軽く頭を下げた。

「ありがとう。じゃ、ちょっと待ってて下さい。お客さんが完全に退けてから座長呼んでくるんで」

そう言い残して恭子は足早に立ち去っていった。

「マジで、入るの?」

亜理砂が驚いた様に尋ねてくる。

「入るよ。君達が良ければね」

「私達は演劇さえ好きで、やる気があれば大歓迎だよ」

「じゃ、大丈夫だ」

俺は安心させる様に笑顔で答えた。

「そっか。じゃ、宜しくね。私は富樫 亜理砂」

「宜しく。俺は桜井 直哉……ってか良かったの?こんな素性の知れない男を簡単に入れて?」

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