Garden-あの日の朝-
学校へは行かず、毎日どこかで盗みを働く兄貴。

子供ながらに『やばい』そう思った。


「姉ちゃん、兄ちゃん何とかしようや。」


ある晩、俺は姉ちゃんの部屋にいた。

隣の兄ちゃんの部屋から漏れる何かの音楽に、紛れるような小さな声で姉ちゃんに訴えた。


「何とかしようって、何をどうやってじゃ?」


雑誌を読みながら仰向けに寝転がったまま、冷ややかに姉ちゃんは言った。


「盗みなんか、良くないて。」

「阿呆。そんなこと当たり前や。やけどな、盗みは病気。いっぺん味しめたらやめられへん」


他人事のように言い放ち、煙草に火を点ける姉ちゃんを、恨めしそうに睨んだ。


「まあ、頭打つまで見ててみ。」


窓の外に煙を吐き出しながら、姉ちゃんは言った。
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