PM13:00 2
そう言うと、目にうっすら涙を浮かべ、両手を神様に祈るあのかたちで組んだ国枝さんは、メガネの向こうのくりっとした大きな瞳をキラキラと輝かせて、私を見つめてきて。
何だかもう、嬉しいやら何処か恥ずかしいやらで
心がくすぐったくて、ならなかった。
夜空を描くことになった私と国枝さんは、理科教室の隣の埃臭い準備室で、約二時間程経っただろうか、大きな一枚の紙の上、黙々と筆を動かしていた。
「あ、安藤さん、そこは筆で直接描くんじゃなくてね」
殆ど真っ黒に近い闇に星を入れようとした私の手を、国枝さんがそっと止める。
首を傾げて、そろそろと隣に移動してきた国枝さんを見ると、彼女の手にはハブラシが握られていた。
「……ハブラシでこすったり、あと」
そう言葉を切って筆を取り、先にたっぷり白の絵の具をつけて、軸の部分を軽く指でとんとんと叩いた。
すると
闇の中に、一気に細かい星が散った。
「おお…!」
感嘆の声をあげると、国枝さんは少し頬を赤らめて、
「それで、丸い形だけじゃつまんないな、って思ったら…」
と続けて。
くるりと筆を回し、軸のお尻の少しとがった部分で、紙の上でまだ渇いていない白い丸に、それを放射状に走らせた。
綺麗な星の形が。
一瞬で、生まれた。
感動で、鼓動が速くなった。