PM13:00 2


腕は解かれないまま上体を起こされる。

背中にはまだ、知らない温もりがある。


「何でそう…わざわざ、自ら怪我を増やすようなことをする」


ため息とともに吐かれた言葉に振り返ると真近に七澤の顔があり、その切れ長の瞳にがっちり捉えられて、何故か胸がドクンと脈打った。

そんな自分を悟られないように、自然と声が大きくなる。

「な……!私だってこうなるとは思ってなかったんだ!それよりも何故七澤がここにいる!!」

「色々と…逃げたくなってな。誰も居ないようだから、休むつもりで入ったんだ」

七澤は眉間に皺を寄せてそう零して

私の頭の中は、ハテナで一杯になった。


「何を言ってるんだ、折角の五十嵐さんとの時間だろう?あとで絶対に後悔するぞ」

「…ちょっと、黙れ」

「はあ!?」


不意に、羽交い絞めにしている腕の力が強まって、七澤の鼓動まではっきりと感じ取れるくらいに、ぎゅうっと体が密着する。
驚いて目を見開いた次の瞬間、私の肩のあたりに何かが乗っかった。



見れば、そこに七澤が顔を埋めていた。


伝わる七澤の鼓動が、速い。
私の胸も、それにリンクして騒がしくなった。



……いったいどうしたんだ、七澤。



「…七澤」
「……」
「何か、あったのか?」
「……」


何も答えない七澤は、ただただ、ぎゅうっと腕の力を強めていくだけで。

見たことも無い七澤のそんな姿に、どうしていいか分からず小さく息を吐いた後、七澤もまた深く息を吐いた。



徐々に、腕の力が緩んでいく。


顔を埋めたまま再度深く息を吐いた、七澤は



「……充電…」



と、ぼそりと呟いた。






















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