PM13:00 2
そうして悶々と考え込んでいる私の肩に、深く息を吐いた七澤が再び顔を埋めてくる。
ぎゅっと抱きしめられるなか、ぼんやりと、まるで子供のようだと思った。
母親に甘える子供。
「……こんなデカイ子供は嫌だな」
思わず出てしまった小さな笑いとともにそう呟くと、肩にあった顔が上がり、後ろから顔を覗き込まれる。
「子供?」
そう聞いてくる七澤に、慌てて何でもないと首を振る。
「それよりもな、七澤」
「ん?」
「そろそろ戻りたいんだが…。準備室に、国枝さんを待たせているし」
絵の具を取りに行くと言って出てきてから、もうきっと、結構な時間が経ってしまっている。
七澤の不安を解消したいとも思うが、今は、国枝さんをひとりで残してきてしまっているということのほうが大きい。
上半身を捕らえる両腕から抜け出そうと、身をよじる。
が、しかしそれに反抗するように、ぎゅっと腕に力を入れられた。
「ちょ…っ七澤!」
本当に何なんだ、こいつは…!
眉間に皺を寄せ、背後を振り返る。
…その時
「きゃっ!!」
と、甲高い女の声が耳に届いて。
怪訝に思って声のほうに視線を向けてみれば、目を見開き顔を真っ赤にさせた国枝さんが、体を壁に隠すようにしてひょっこりと顔を出し、こちらを見ていた。