PM13:00 2
教室の戸を開け見渡すと、窓際の席に突っ伏している見慣れた黒髪の頭を見つけた。
珍しく、他に残っている生徒も居ないようで。
穏やかな呼吸をあらわす華奢な肩の微かな動きに、何故か緩みそうになる口元を押さえながら、起こさないようにゆっくりとした足取りで席へと向かった。
目の前まで辿り着いて、見下ろす。
机の上には、花柄のバンダナで包まれた二つの弁当箱。
机に広がる長い黒髪が、窓から差し込む午後の光を受けてきらめき、滑らかにうねっている。
前髪の間からは長い睫毛が見え、柔らかそうな唇から穏やかな呼吸が聞こえた。
無防備な姿、その可愛らしさに、思わず目を細めてしまう。
…ずっと見ていたい、という、熱を持った感情が胸の中で渦巻く。
だが、今やるべきは。
俺は安藤の頭にぽんと掌を乗せ、びくりと肩を跳ね上がらせ瞬きながらゆっくりと状態を起こした安藤に、笑いかけた。
「待たせてすまん。……行くか」