PM13:00 2
なんなんだ、いったい。
そう、胸のなかで深くため息をついたとき。
「安藤さん?」
という、小さな声が背後から聞こえた。
振り向くと、ベンチの後ろに植えてある木に手をついて、五十嵐さんがこちらを見ていた。
不思議そうに首をかしげ目を見開いた表情もまた、可愛らしい。
「ああ…うん」
ぎこちなく頷くと、何故か嬉しそうに目を細められる。
「隣、座っていい?」
と言われ再度頷いた私の隣に、五十嵐さんは柔らかな笑みを浮かべたまま、すとんと腰かけた。
再び、静寂に包まれる。
木漏れ日が揺れて、私の膝で光の玉が愉しげに踊っている。
弁当には手をつけず、ぼうっとそれを眺めていると、隣から声をかけられた。
「お弁当、食べないの?」
視線を声のほうに向けると、膝に置いた弁当を見てきょとんと首をかしげている五十嵐さん。
私は首を振って、赤い弁当箱の蓋をパタンと閉めた。
「…もう、いいんだ。お腹いっぱいだから」
…何故だろう、今日はあまり食欲が無いようだった。
それよりも、この意味不明の胸の痛みが先ほどよりも増していて、そっちのほうにばかり意識がいってしまう。
そんな私に、五十嵐さんはぷくっと頬を膨らませて言った。
「駄目だよお、安藤さん、すっごく細いもん!これ以上痩せたら大変だよ?もっと食べなきゃ!」
「いや、それは無い」
「そんなこと無いよ。ほら。私の腕と比べたら」
そう言って。
白く細い腕を私の腕の横に出してくる。
そのとき、何故か七澤の顔が浮かんで、私は顔を歪めた。
……ああ、胸が痛い。