王様監禁ゲーム。


それからあたしは毎日武井さんが入院している病院に行った。

幸い武井さんは右利きで、ある程度のことは出来るが、それでもせめてもの償いだった。



「ありがとうございます」

優しく笑う彼の笑顔が、いつしか愛おしいと思っていた。



それから数日後、杏が捕まったというのを警察の方から聞いた。

色々事情聴取をしているらしいが、断固して拒否しているらしい。


もうどうでもよかった。

“杏”、その単語さえ聞き入れたくなかった。


早く忘れたい。

あの悍ましい事件を。



だけど、彼、武井さんに会えなくなるの嫌だった。

いつしか、償いなんかじゃなく、恋心から病院に通うようになっていた。


今日も会える。

そう思うと自然と足が軽くなった。



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