僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「祠稀に何を吹きこんだの」
「何って……? あ、ああ……喧嘩した相手をガラスに突っ込むのが、この学校での定番なんじゃない?って」
「アホかぁー! そんなわけないでしょ!? 祠稀もなんで納得してんのよ、このバカコンビ!」
「え? なんだよ違ぇの?」
「当たり前でしょ!?」
バカだ! やっぱり祠稀って単細胞バカなんだ……!
祠稀は「なーんだ」と言って、足下に転がるひとりの先輩を見下ろした。
「アンタさぁ、この学校で1番強いって奴だよね? ……残念。俺のが断然強かったな?」
フッと鼻で笑って、ズボンのポケットに手を突っ込む祠稀に僅かに身震いしてしまう。
「今からこの学校で一度でも粋がってみろ。……潰すぞ」
別人のような低い声と冷たい瞳。祠稀はとても怖い顔をしたかと思うと、パッとあたしと彗に笑顔を見せた。
「これで、この学校は平和になったんじゃねぇの?」
祠稀はあたしの横を通り抜けて、立ち尽くしていた先生に悪戯に笑ってみせる。