僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「はぁ……」


前に言ってた通り。
祠稀は喧嘩で負けたことがないらしい。


まさかあんなに血の気が多いとは思わなかったけど、ダメだよね、意味のない喧嘩は。


「祠……」


文句と説教をしようと思ったけど、すぐに口を噤んだ。


祠稀の、あの別人のような表情を思い出してしまったから。


「なーぎー。何突っ立ってんだよ。早く座らねぇとお前の弁当も食うぞ」

「……そんなの許さないよ」


妖艶に笑うこの美少年は、一体何に怯えてるんだろう。


あんな、支配力を見せつけるようなことをして。何者にも、自分の邪魔をさせないみたいに……。


……考え過ぎかな。


ただ単に喧嘩っ早くて血の気が多いだけかもしれない。


あたしは止まらない思考を振り切って、有須が作ったお弁当に箸を伸ばした。
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