僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
◆Side:彗
「彗、まーた呼び出されたの?」
清掃が終わって帰りのホームルームが始まるまでの微妙な時間。教室に戻ると、凪がニヤニヤと笑ってきた。
「……別に」
ただ、見知らぬ女子にメアドを聞かれただけだよ。
「断ったんだろ。もったいねー」
「彗ってメール嫌いなの?」
「……嫌い」
俺の外見だけしか知らないのに近付こうとする女子が、嫌い。
あまり機嫌のよくない俺に、祠稀は凪の机に腰掛けながらケラケラと笑う。
「彗は見た目、どっかの国の王子っぽいもんなー。そら女子は騒ぐって。ひとりくらい食べちゃえばいいのに」
「うーわっ! 祠稀ってやっぱそっち系の考えなんだ。絶対女にもだらしないと思ってた」
「はぁ!? 俺のどっこが! 求められれば差し上げてるだけですけど?」
「それ、来る者拒まずってことじゃん。で、去る者追わずでしょっ」
「じゃあお前はどうなんだよ」
祠稀と凪が会話する中、有須はこの手の話が苦手なのか、よく分かってないのか。はたまた興味がないのか、教科書を鞄に詰め込んでいた。