僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「……何見てんの。まだできないよ」
俺はキッチンがよく見えるダイニングテーブルに座って、野菜を切る凪を見つめる。
ザクザクと野菜が切られる音を聞きながら、俺は自分なりに導いた答えを口にした。
「凪ってさ、人の心配ばっかするだろ。自分より、他人優先」
「他人て……友達でしょ」
「俺が悩んでると思って、悩んでたわけ?」
テーブルに頬杖をついて、特に何の表情も出さずに聞くと、凪は眉を寄せて少し頬を染める。
「だったら何よ、悪い?」
「別に。秘密事、嫌いそうだなーと思っただけ」
凪はフライパンで野菜を炒めながら暫く俺の顔を見て、視線を逸らした。
「嫌いっていうか……何かに悩んでるなら話して欲しいと思うし、頼ってほしいなって思うだけだよ」
「ほんっと姉御肌だな」
「んふふーっ! 老けてるって言いたいのかなぁ?」
持っていた木ベラを今にも折りそうな勢いの凪に、俺は引きつった笑顔を見せた。
気にしすぎだろ……。