僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


ほんと、変な奴。俺と同い年のくせにやたらしっかり者だ。


掃除、洗濯、自炊と色々慣れてるし、計画的なところもあるし。まるで昔、ひとり暮らしをしていたように感じる。


でも実際、同居生活を始めるまで実家暮らしだったみたいだし……家の手伝いをよくやってたんだろ。俺からしたら、そんなの想像できない。


女だからとか、男だからとか関係なく、俺は家の手伝いなんてした覚えがない。やろうと思ったこともねぇけど。


俺は自分の家が嫌いだったし、家族なんてもんはもっと嫌いだ。あれほど不必要なものはあるのかってくらい。


親父が俺をゴミ扱いするように、俺も親父をゴミだと思うしカスだと思ってる。そんな気持ち、きっと凪には分からないんだろうな。


『うちらは今日から家族同然なんだからさっ』


有須がこのマンションに来た日、何の衒いもなく言った凪の言葉を思い出す。


底抜けに明るい凪は、信じられないものも、憎むべき存在なんかも知らない気がした。


綺麗に真っ直ぐ育った、そんな気がする。親の顔が見てみたいくらいだ。

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