僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
たまに小煩くて厳しい時もあるけど、ウゼェって思うことはない。いや、あるけど、心の底から嫌だとか思ったことはない。
凪の厳しさはいつも優しさで溢れてる気がするから。素直に耳を傾けたくなるのは、俺がそういう人間をひとり知ってるからかもしれない。
人の中心にいる、闇夜を照らす月みたいな……。
「はい! 熱いからねっ」
ぼーっとしていたら突然目の前に黄金に輝くオムライスが現れた。
「お……おぉぉ!?」
超うまそうっ。
「デミグラス派?」
「俺はケチャップ派」
「ん」
「サンキュー」
凪からケチャップを受け取り、湯気が立ち上るオムライスにかける。半熟の卵は見てるだけで腹が減る。スプーンを手に取ると、凪も座って「いただきます」と言い食べ始めた。
一口食べて、俺は目を輝かせる。
「うっま! 凪マジで料理うめぇよな……」
「そう? 祠稀のお母さんはどうなの?」
口の中にオムライスを入れた瞬間でよかった。もぐもぐと口を動かす俺を見て、凪は笑いながら答えを待っている。