僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
◆Side:有須
「あれ? 彗! 出掛けてたの?」
すっかり空がオレンジ色に染まった頃、部活帰りのあたしはマンションの前で彗と鉢合わせた。
「うん……有須は部活? ……お疲れさま」
「あはっ! ありがとう!」
彗はいつも、ワンテンポ間を置いてから喋る。それがあたしには心地よくて、たくさん彗と話したくなるんだ。
彗が集合インターホンに鍵を差し込みオートロックを解除すると、グランドロビーに繋がる自動ドアが開く。
「買い物でもしてたの?」
ロビーに入りエレベーターホールに向かいながら、彗を見上げて尋ねた。
「……何も持ってないのに?」
おかしそうに微笑んでエレベーターのボタンを押す彗の手には、確かに持ち物は何もなかった。
「あ、昨日のメールの人と遊んでたとか? 中学の友達だっけ?」
そう言った時にちょうどエレベーターのドアが開き、早々と彗が乗り込んむ。だけどあたしはすぐに乗り込めなかった。
彗が一瞬だけ、苦しそうな表情をしたように見えた。