僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「おっかえり〜!」


リビングに入ると、凪はいつも抱き付いてくる。「かわいいかわいい」って言いながら頭を撫でてくれる凪は、お母さんのようで、お姉さんみたい。


あたしはひとりっ子だから、本当にお姉ちゃんができたみたいで凄く嬉しい。


同い年なんだけどね……。


「夕飯何?」


自室に入ってジャージに着替えてきた彗が聞くと、キッチンにいた祠稀が答える。


「すき焼き」

「……麺じゃないんだ」

「黙って食え!」


菜箸を持ちながら祠稀は眉を吊り上げた。


きっと凪にしごかれながら作ったんだろうなぁ……。でも、おいしそうな匂い。


「……祠稀が作ったの?」

「味付けは凪だけどなー」


彗は祠稀の隣に行って、すき焼き鍋を覗いているみたいだ。


「あ! ちょっと祠稀! 彗もっ。何勝手に食べてんの!」

「ただの味見じゃん。なあ、彗」

「肉1枚食べたら味見って言わないでしょーが!」


キッチンに立ったままもぐもぐと口を動かすふたりに凪は怒り出し、リビングは騒がしくなった。


凄く今さらだけど、彗と祠稀が並ぶと本当に眩しいっていうか……凪も美人だし、あたしってだいぶ場違いなんじゃないかと思えてくる。

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