僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「凪の? その着信音初めて聞いた。綺麗な曲だね」
鳴ったのは紛れもなくあたしの携帯で、チカチカと音楽に合わせて光るライトを見ながら口の端を上げる。
「でしょ? メールの着信音」
「もしや男からですかー? 顔がにやけてますけど?」
祠稀にからかわれても、あたしは携帯を拾い上げ笑顔を見せた。
「そうですけど?」
「うそっ! 誰だれ!? 好きな人!?」
有須が興奮気味に聞いてきて、さすが女の子だなぁと思う。恋バナは女の子の好物だよね。
「そんなんじゃないよ〜。大切な人っていうか、尊敬してるんだ」
「……凪、綺麗」
「はい!? 何いきなり!」
突然のほめ言葉に顔を赤らめると、有須は「だ、だって!」と口ごもった。
「なんか、すごく嬉しそうに微笑んだから……本当に大切な人なんだなぁって、思って……」
……あたしそんなに笑顔だった?
想像するとなんだか恥ずかしくて、切なくて。大切な人からのメールを受信した携帯を、ぎゅっと握った。
「……見てくれば?」
「……」
そう言ったのは彗で、あたしの胸はちょっと痛くなる。あたしの大切な人を、彗は知っている。
「別にここで見ればいいべや。何、そんなに恥ずかしい内容なわけ?」
相変わらずニヤニヤと口の端を上げる祠稀に、あたしはハンッ!と思い切り鼻で笑ってやった。