僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


幸せだと言った君はきっと、頬をほこらばせていたね。


その姿を、簡単に想像できるよ。はにかんで、照れくさそうに、少しだけ目を伏せて。本当に幸せそうに、笑ってるんでしょう?


「……逢いたいとか……簡単に言うなっつーの」


枕に顔を埋めて、布団を握り締める。その手が震えてることも、こんな風に悪態をついてることも、彼は知る由もないんだろうと思う。


……嬉しいよ?
大切な君に逢いたいと言われて、嬉しくないわけないよ。


「……」


部屋の隅にある勉強机を見つめる。ベッドから降り、机の1番上の引き出しを開けた。


≪夢虹 凪様≫と書かれた袋を逆さまにすれば、バラバラと出てくる中身。


銀シートの左右上下に規則正しく包まれた白い錠剤。


パキッと銀シートから1錠押し出して、口の前まで持っていく。


……、やめよ。


薬をゴミ箱に捨て、もう一度ベッドに横たわる。


……嬉しいよ。

あたしに逢いたいと思ってくれることが。逢いたいと思われる自分が、存在することが。


だけどあたしは君のことが――…。



世界で1番、大嫌い。


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