僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


「……」

携帯がまた、俺の気分を悪くさせるメールを受信した。


夜中にまで……。どれだけ必死なんだ。


溜め息を吐き、諦めにも似た気持ちでメールを開く。目に飛び込んできた内容に、思わず鼻で笑ってしまった。


≪育ててもらった恩を忘れたのか≫


「ふ……ははっ……」


今度は逆ギレ? くだらない。


最初から本性を出せばよかったのに。優しくしておけば俺が素直に受け入れるとでも思ったんだろうか。



受け入れないよ。今さらどう接してこようと、俺には育てられた記憶なんてないんだから。



そう思うと、育ててもらった恩という言葉が本当におかしくなってくる。


誰が、誰に育てられたっていうの?


そんな記憶はない。何ひとつ浮かばない。


朝に起こされたことも、食卓を囲んだことも、冗談を言って笑いあったことも、おやすみと言葉を交わしたことも。一度だってないだろ。一度も、なかっただろ。

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