僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ

――――…


「彗っ! おっはよーう!」

「……はよ」


日曜の昼前。自室から出ると、すでに起きていた凪が俺の胸に抱き付いてくる。その温かさに癒されて、凪の腰に両手を回し抱き締めた。


「うっふふ〜」

「ちょ……危な……危ない危ないっ」


凪が抱き付いたまま歩き始め、後ろ歩きを強要された俺はソファーの背もたれまで押された。


「彗、あったかい」

「起きたばっかりだから」


ソファーの背もたれの上に腰掛けると、凪は俺の首に腕を巻き付ける。


「……凪?」

「んー?」

どうしたの?


そう聞けずに、小さな背中に手を回した。同時に凪の腕の力も強くなって、俺は凪の肩に顔を埋める。


……あったかい。

昨晩、ぽっかりと開いた胸の空洞が埋まっていくような気分。


そういえば、凪も昨晩“彼”と連絡を取ったんだっけ……。


ああ、だからか。
凪が、俺をこんな風に求めてくるのは。

< 150 / 641 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop