僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
「凪」
少し強めに呼ぶと、凪は俺の首に回していた腕を解いた。だけど抱き締めてくる場所を変えただけで、凪は俺の背中に腕を回して離れようとしない。
「……祠稀と有須は?」
離れてほしいわけじゃなかったけれど、聞こうと思った言葉は喉奥で消し去った。
「部活」
俺の胸に顔を埋めながらそれだけ言った凪の声は、少しくぐもっている。俺もそれ以上何も言わず、赤茶の髪を指に絡めて時間を潰した。
……前は、サラサラのストレートだったのにな。
黒く、艶のあった凪の髪は指通りがとてもよかったのを覚えている。
今の凪の髪はスパイラルが掛かっていて、傷んでるわけでもないけれど、昔に比べると指通りはよくない。
顔のパーツだってそんなに変わらないのに、髪型だけでずいぶん印象が変わるだな。なんて、さしてどうでもいいことを思った。
凪は凪だ。優しくて、明るくて、面倒見がよくて、意地っ張りで、素直じゃなくて……とても、寂しがり。
昔と変わらない。
「……」
なんでか涙が出そうになって、グッと堪えたまま、暫く凪の温かさを感じていた。