僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
◆Side:祠稀
「ただい、ま……」
って、誰もいねぇんだった。
昼の2時過ぎ、用事を済ませて帰宅すると、口を衝いて出た言葉に気恥しくなる。
キーチェーンに繋がった家の鍵をデニムのポケットに押し込みながら、廊下を進んだ。俺以外誰もいないリビングは、静寂に包まれている。
有須は部活の奴らと飯を食ってくるらしい。彗と凪は一緒に出かけると、帰ってくる途中に電話がきた。
「お。気ぃ利くなアイツ」
キッチンに入ると、【茹でて食べてねー!3分!】と書かれた置き手紙。見ると、生麺とゆで卵、メンマと焼き海苔が皿に載せられてあった。
早速ポットから手鍋に熱湯を注ぎ、火にかけて麺を茹でる。その間に自室へ戻り、楽なスウェットに着替えて再びキッチンへ戻った。
「おわ! あぶね……っ!」
ぐつぐつと沸騰するお湯が手鍋の外に漏れ出したところで、慌てて火を消す。
もう3分経ったよな?
まな板の上に出されていた網目のボウルをシンクに置いて、そこへ茹でた麺を流して湯切りする。
料理なんかしたことない俺は同居を始めてから、簡単なものは作れるようになった。
ほんと、大した労力を必要としないもんばっかだけど。
できあがったラーメンと箸を手にリビングテーブルへ向かい、テレビを点けてから「いただきます」と心の中で呟いた。