僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ


20分もしないうちに食べ終わり皿を洗っていると、訪問者を告げる音が耳に届く。


───ピンポーン。と二度目のインターホンに水を止めた。


……誰だよ。


時計を見ると、14時46分。居留守を使おうかと迷ったけど、後で凪にバレたらめんどくせぇと思い、手を拭ってからキッチンを出た。


「はい? 新聞ならお断りですけど」


集合インターホンに繋がる受話機を手にそう言ったものの、返答がない。


あ? イタズラか?


そう思って訪問者を見るためにモニターの電源を入れようとした時。


『夢虹彗はいらっしゃいますか』


年配の、男の声がした。


……彗?


「……どちらさま?」


ボタンに向けていた指を下ろし、サー……という機会音に耳を傾ける。


『夢虹彗の育ての親、とでも言いますかね』


……育ての親? なんだそれ。……本当の両親じゃねぇの?

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