僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅰ
不可解な言葉に眉を寄せながらも、
「あー……すいませんけど彗の奴、出掛けてていないんすよ」
と、ひとまず彗がいないことを伝えた。
また、無言。
めんどくせぇなと思いながら耳の後ろを掻いていると、ボソボソとした話声が受話機の向こうから聞こえる。
他に誰かいんのか?
『申し訳ないが急用でね。どうしても会いたいんだが』
突然はっきりとした口調で言われ、「はあ、そうなんすか」と完全に他人事のような返事しかできなかった。
え? まさかとは思うけど、上がらせてくれってことか?
『そちらで待たせてもらってもいいだろうか』
ああ、マジでか……。冗談だろ。勘弁してくれ。
どうすっかな……勝手に上げていいのか? でも彗の、仮にも親代わりだろ? 急用だっつーし……。
めんどくせぇな。
結局そんな気持ちで、俺は了承した。